実践での使い方
ゲートランは「DF間の隙間を一直線に突く」シンプルだが高度な裏抜けだ。2人のCBの間、通常は1-2mしかない狭いゲート上でスタート位置を取り、パサーのモーションに合わせて一気に裏へ走る。CBは横の動きに対しては対応できるが、真正面への直進には反応が0.3秒遅れる。この時間差とスピードでゲートを突破し、スルーパスを裏で受ける。ジェイミー・ヴァーディやカリム・ベンゼマが得意とし、相手がマンツーマンでもゾーンでも通用する普遍的な技術だ。重要なのは「止まっている時間」で、動き続けるとタイミングが合わず、止まって待つことでパサーとの呼吸が合う。
トレーニング方法と技術要件
まず「ゲート上での待機技術」を習得する。CB間に立ち、両CBから等距離の位置を見つけ、そこで静止する。動かずに待つ忍耐力が必要だ。練習ではコーンで2人のCBを再現し、その間に立って待つ姿勢を反復する。次に「スタートのタイミング」を磨く。パサーが顔を上げた瞬間ではなく、パサーの足が前に振られた瞬間にスタートする感覚を養う。週2回、スルーパス専用メニューを組み、様々な速度とコースのパスに対応できる走力を鍛える。爆発的な加速力も重要で、0-10mのスプリント力を高める筋力トレーニングを並行して行う。
使用タイミングと代替案
使用タイミングは相手が「ハイライン」を敷いている時だ。DFラインが高いほどゲートの奥にスペースがあり、スルーパスが効果的になる。また相手CBが「横の連携が弱い」チームに対しても有効で、CBが互いにカバーし合わないとゲートは簡単に突破される。ただし相手が「ローブロック」で引いている場合、ゲートランは無効化される。その時の代替案は「横への抜け出し」だ。ゲートを通らずに、CB の外側を回り込んでスペースを見つける。あるいは「足元で受ける」選択肢に切り替え、裏ではなく手前でボールをキープしてチャンスを待つ戦術もある。
よくある失敗と修正方法
最も多い失敗は「スタートが早すぎてオフサイド」になるケースだ。これはパサーとの合図を明確にし、パサーが蹴る0.1秒前まで待つ習慣をつけることで解決する。次に「CBに身体を当てられて止まる」失敗がある。これはゲートの真ん中ではなく、CBの死角(肩越し)を通ることで接触を避けられる。また「スピードが足りず、DFに追いつかれる」失敗も多く、これは0-10mの加速力を高める専用トレーニングで改善する。スルーパスの精度も重要で、パサーには「ゲート上に出す」のではなく「ゲートの3m先に出す」意識を共有させる。
バリエーションと応用
基本形は中央のゲートランだが、ハーフスペースからも応用できる。CBとSBの間のゲートを突くことで、サイドからの裏抜けが可能になる。また「ダブルゲートラン」という高度な技もあり、2人のFWが同時にゲートを突くことで、守備は両方をカバーできない。さらに「フェイクゲートラン」では、ゲートを突く素振りを見せて止まり、足元で受けるフェイクを使う。アグエロやスアレスが多用した「カーブゲートラン」は、直線ではなくS字の軌道でゲートを通り、CBの予測を外す最上級の走路技術だ。レヴァンドフスキの「遅延ゲートラン」は、わざと遅れてゲートを突き、DFがオフサイドトラップに失敗した瞬間を狙う戦術的な判断力だ。