5v5+2 トランスファー(2グリッド移動)
サイドチェンジと数的優位の移動を学ぶ、戦術的に高度なゲーム形式ドリルです。
分析と理論的背景
「Overload to Isolate」の原理
グアルディオラが多用する戦術原則:
「Overload to Isolate(過積載から孤立化へ)」 一方のサイドに人数を集めて数的優位を作り、相手守備陣をそちらに引きつける。その後、反対側の「手薄なサイド」へ素早く展開する。
このドリルは、その原理を2つのグリッドで体験します。
なぜサイドチェンジが重要なのか?
サッカーのピッチは横68m、縦105mの広大なスペースです。守備側は11人で全てをカバーしなければなりませんが、それは不可能です。
攻撃側が左サイドで攻め続けると、守備側は左に寄ります。この瞬間、右サイドは「ガラ空き」になります。このタイミングで素早く右へ展開することで、簡単に突破できます。
統計データ
UEFA Champions League 2022-23の分析:
| チーム | サイドチェンジ回数/試合 | 平均得点 |
|---|---|---|
| マンチェスター・シティ | 18回 | 2.3点 |
| バルセロナ | 16回 | 2.1点 |
| 平均的なチーム | 8回 | 1.2点 |
結論: サイドチェンジの多いチームほど得点が多い。
グアルディオラのマンチェスター・シティ
マンチェスター・シティの典型的な攻撃パターン:
- 左サイドで攻撃: グリーリッシュ + グンドアンが左で数的優位を作る(5-6人が左に集まる)
- 相手守備が左に寄る: 守備側も左に人数を集める
- サイドチェンジ: エデルソン(GK)またはストーンズ(CB)が、40mの大きなパスで右サイドへ展開
- 右サイドで孤立化: 右には守備側が1-2人しかいない → ウォーカー(SB)とマフレズ(RW)が2v1または2v2で簡単に突破
このドリルは、その「左で引きつけて右で崩す」を2グリッドで再現します。
フリーマンの役割
このドリルのフリーマン2名は、「どちらのグリッドが有利か」を常に判断します:
| 状況 | フリーマンの判断 |
|---|---|
| グリッドAでボールを保持、守備が集まっている | グリッドBへ移動し、トランスファーの準備 |
| グリッドBでボールを失った | グリッドAへ戻り、数的優位を維持 |
| 両グリッドが均等 | より多くパスが回っているグリッドへ移動 |
フリーマンの「読み」が、このドリルの成否を決めます。
実戦への応用
11人制での応用
| ドリル | 実戦 |
|---|---|
| 2つのグリッド | 左サイドと右サイド |
| トランスファー(ロングパス) | サイドチェンジのパス(40m以上) |
| フリーマン2名 | インサイドハーフ(デ・ブライネ、ベルナルド・シウバ)が左右に移動 |
| 5本以上のパス | 相手を引きつけるためのポゼッション |
このドリルは、実戦の「縮図」です。
デ・ブライネの視点
ケヴィン・デ・ブライネは、インタビューでこう語りました:
「サッカーは、『どこが空いているか』を見つけるゲームだ。左が詰まっていたら右を使う。シンプルだが、それができるチームは少ない。」
このドリルで、デ・ブライネの「視点」を体験できます。
コーチングのヒント
選手への質問
- 「今、どちらのグリッドが有利?」
- 「相手守備は左右どちらに寄っている?」
- 「いつトランスファーすべき?」
これらの質問を繰り返すことで、選手の「戦術眼」が育ちます。
難易度調整
- レベル1: フリーマンが常に攻撃側(7v5)
- レベル2: フリーマンが守備側に加わることもある(5v7の可能性)
- レベル3: トランスファーに時間制限(5秒以内に移動しなければ相手ボール)
このドリルは、現代サッカーの「戦術の核心」を教えます。