実践での使い方
ハーランドのバックステップはクロス対応における革命的な動きだ。通常、FWはゴールに向かって全力で走り込むが、ハーランドは逆に下がる。一度ゴールマウスへ突進してCBを押し下げた直後、クロスが上がる瞬間に2-3m後退する。CBは前方への慣性が働いており、急には止まれない。この物理的な遅れを利用し、FWだけがフリーの状態でヘディングやボレーを打てる。マンチェスター・シティで1シーズン50ゴール超を記録した技術の核心がこれだ。重要なのは「本当に突進する」演技力で、全力でゴールに向かう姿勢を見せなければ、CBは騙されず後退についてくる。
トレーニング方法と技術要件
まず突進と後退のタイミングを体得する。クロッサーがバイラインに到達した瞬間に突進を開始し、クロッサーが内側を向いた瞬間に後退する。練習では実際にCBをつけ、突進→後退の一連の動作を反復する。CBは「ついていく」指示を受けており、FWは2-3mのセパレーションを確実に作る技術を磨く。週2回、クロス専用メニューを組み、様々な高さと速度のクロスに対応できる感覚を養う。次に「後退しながらのヘディング技術」が必要だ。通常は前方へ跳ぶが、後退しながら跳んでもパワーを失わない体幹の強さを養う筋力トレーニングを並行して行う。
使用タイミングと代替案
使用タイミングは相手CBが「マンツーマンでついてくる」時だ。ゾーンディフェンスに対してはバックステップの効果が薄く、人についてくる相手に対して威力を発揮する。また試合の後半、相手DFが疲れて反応速度が落ちている時に仕掛けると成功率が上がる。ただし相手が「ボールウォッチャー」でFWの動きを見ていない場合、バックステップは無意味になる。その時の代替案は「ニアポスト突進」だ。後退せずにそのままニアポストまで走り切り、ニアでコースを変える。あるいは「ファーポスト滞在」で、最初から後方に留まり、ファーへのクロスを待つ戦術に切り替える。
よくある失敗と修正方法
最も多い失敗は「後退が早すぎて、CBもついてくる」ケースだ。これは突進の時間を長く取り、CBが完全に前方に流された後に後退することで解決する。次に「後退の距離が短すぎて、DFとの距離が保てない」失敗がある。これは最低でも2m、理想は3mのセパレーションを確保する意識を持つことで改善される。また「クロスのタイミングとズレる」失敗も多く、これはクロッサーとの合図を事前に決め、クロッサーが蹴る0.3秒前に後退を完了させるタイミングを体得する。空中戦での競り合いも重要で、後退しながらもジャンプ力を保つための下半身の爆発力を鍛える。
バリエーションと応用
基本形はファーポストへのクロスに対するバックステップだが、ニアポストからも応用できる。ニアに突進してから後退し、中央で受けるパターンも得点率が高い。また「ダブルバックステップ」という高度な技もあり、一度後退してCBを外した後、再び前進して裏を取る二段階の動きだ。さらに「フェイクバックステップ」では、後退する素振りを見せて止まり、実際は前進してニアを取る逆転の発想もある。レヴァンドフスキが多用する「サイドバックステップ」は、後退ではなく横にずれることでCBの視界から消え、ブラインドサイドから合わせる最上級の空間認識力だ。